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エンジェルパイロと母の物語
5月8日の北海道競馬で、エンジェルパイロ(2歳・牝)がデビュー戦を勝ちました。母は、同じく北海道でデビューし、東京2歳優駿牝馬で優勝、2011年NAR最優秀2歳牝馬を受賞した、エンジェルツイートです。パイロは、大井で活躍中の半兄メテオバローズ(4歳・牡)に続く2番仔。そして、母にとっては、最後の子となってしまいました。
13年に現役を引退したツイート。生産した伏木田牧場は、繁殖の期待をこめて買い戻しました。ところが、初仔のメテオの出産時、息子は母の肛門を破って出てきてしまったのです。
離乳後、牧場は一大決心をして、肛門を再生する大手術を行いました。馬にとってもキツいものでしたが、どうにか成功し、次に授かった命がパイロでした。しかし、あろうことか娘のお産により、母の肛門は再び傷ついてしまったのでした。こうなると、母馬にも牧場にも再挑戦は厳しくなります。
幸いにして跡取りができたことから、牧場は母の繁殖引退を英断。この時、ツイートの共同馬主だった放送作家の村上卓史氏が、思い出の馬ということで引き取り、その縁で娘も一部を持ち、名付け親にもなってくださいました。競走馬エンジェルパイロは、こうして誕生しました。
幼いパイロの成長は、決して順風満帆だったとはいえません。お産の翌日、パドックに放牧した母子を厩舎に入れようとしたら、痛みもあり神経の立っていた母が触らせず、なんと一晩中、そのまま外で過ごすことに。また、肺炎にかかり、2か月間にも及ぶ舎飼生活を余儀なくされました。人馬で危機を乗り越え、迎えた離乳の日の母の泣き顔は、私の胸に強く焼き付いています。
パイロ、奇跡のような初出走、そして見事な初勝利、本当におめでとう! これからの末永い活躍を祈っています。
5月15日 内藤律子
エンジェルパイロと母の思い出
4/16に誕生、翌日初めて外へ。娘を見る母の目力に緊張が走る(2017/4/17撮影)
飼葉桶で誘うも、厩舎に帰ろうとしない母。このまま外で夜を明かした(2017/4/17撮影)
制御のためのロープを、親子仲よく無口にさげて(2017/4/20撮影)
傷も傷むのか、お母さんはお疲れ気味。パイロ、いい加減にしなさいよ(2017/4/25撮影)
賢くて気性は激しいけれど、上手に子育てをしていた(2017/5/3撮影)
母の心配そうな視線をよそに、娘は驚くほど従順に削蹄をこなした(2017/7/5撮影)
肺炎が治り、約2か月ぶりのパドック。パイロ、ずいぶん大きくなったね(2017/7/13撮影)
滑らかな素晴らしいジャンプ。この力強さなら、全快に太鼓判!(2017/7/25撮影)
久しぶりに他の馬と合流。手荒く迎えられたが、母にしっかりついて走った(2017/8/2撮影)
残り少ない親子の時間が穏やかに過ぎてゆく(2017/10/13撮影)
離乳の日。啼きながら母を探して走り回る子馬たち(2017/10/16撮影)
鼻を膨らませ、泣きべそかいて。せつないね、お母さん。そしてお疲れ様でした(2017/10/16撮影)